先生、ここから一発逆転ですよ!
"──カンナ?"
「……」
「──すぅ……ん……」
静かな寝息を立てるカンナを眺めると、横になってもなお主張を止めない彼女の山々が、規則正しく上下していた。
《──明晰夢状態を感知。催眠成功です》
〈やりましたね先生!あ、ヤられましたねってのが正しいでしょうか?〉
傍らに抱えたシッテムの箱から情報が伝わってくる。冷静沈着なプラナと天真爛漫なアロナから、揃って穏やかでない発言が飛び出した。
"うーん……どうするのが正解か……"
寝入ってしまったカンナに、とりあえず布団を掛けてあげた。さて、自ら蒔いた種だとしても、どうしたものか。
事の発端を思い返してみようと、思案を巡らせた。
…
はじまりは数日前。自宅にてリンとのオンライン通話中に、彼女から相談事を持ちかけられたんだったか。
『──以上となりますが、先生からの質問等は?』
"うーん……"
"ごめん、頭が理解を拒んでるんだけど"
寝不足で聞き逃したわけじゃない。ここ最近は比較的ぐっすりと眠れている方だ。リンとの初夜では、入浴介助してもらう程に精魂尽き果てたりもしたくらいに。
彼女が次の誕生日を迎えたら、責任を取るべく婚姻届を提出しよう。そうリンと協議していた筈だけに、今回の相談事はなかなかぶっ飛んでいるというか。
"ホストとして一夜ずつ、生徒を迎え入れて欲しいって言うけど……"
"リンちゃんはそれで良いの?まだ公にしてはいないけど……彼女としてさ"
この場合、もてなす側としてのホストという事みたいだ。ホストクラブで生徒に貢がせろとか言う訳じゃないらしくて安心……
いや、少しも安心できそうにない。
「いえ……私も思うところはあります。ただ、彼女達とはある種の同盟を組んでいるので、そこは譲歩しました」
「いずれも先生を慕うゲストばかりです。肌を重ねようと誘惑してくるでしょうが、なるべく穏便に済ませて欲しいですね」
不意にメッセージが届いたと思えば、通知音が連続で重なった。リンによるスケジュール一覧のようで、初日にはカンナをよこすらしい。
「ああ、誘惑に負けても別にペナルティは課しませんよ。致した回数分、後日私に出してもらう程度ですので」
"そっかぁ……"
リン以外に手を出すつもりは無いけど……耐えられるか怪しい気がする。
「誘惑に抗うつもりであれば……そうですね、シッテムの箱を駆使するとよいでしょう」
「権限を持つ先生なら、うまく活用できるはずです。ご武運を」
そのまま通話終了となった。
さて、どうしたものか……とりあえずシッテムの箱にアクセスして、アロナとプラナのサポートを取り付けようか。
後編につづく